ここでは、一番ご相談の多い、離婚後定住(日本人の配偶者や永住者等と離婚後又は死別後の定住者への在留資格変更申請)における理由書の書き方やそのポイントついてご説明します。
- 変更理由書には何を書くべきか?【変更時の共通事項】
- 変更理由書には何を書くべきか?【離婚後定住】
- 定住への変更が認められた事例及び認められなった事例
- 実際の理由書記載例【離婚後定住】
- どんな書類を提出すればよいのか?【離婚後定住】
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■変更理由書には何を書くべきか?【変更時の共通事項】
基本的に変更理由書では、「変更後の在留資格に私は該当している」つまり、在留資格該当性があるということを記載します。在留資格の該当性は、求める在留資格によって異なりますので、理由書の記載内容ももちろんビザごとにバラバラです。
しかし、日本人の配偶者から定住者への変更でも、留学から経営管理でも、あらゆる変更申請する際の理由書に記載するとよい共通事項があります。入国管理局の審査は、当該外国人の日本在留の可否を、常に以下の見地から審査していると考えられます。(もちろん以下の事由以外にも様々なものが審査の対象です。)理由書を作成する際には、常に以下の事を頭の片隅に置いて、ご自身の事で当てはまることはないか?と気にしながら記載してみて下さい。また、当てはまることがあれば、積極的に主張し、証拠資料でもって立証していきます。
○在留の必要性
在留資格申請を行う方から言わせれば、「在留が必要だからビザ申請するんだろっ!!」と言われそうですが、「日本に在留したい」と「日本に在留する必要がある」は全く別物です。日本に在留したいという情熱を理由書でアピールされる方がよくいますが、あまり効果はないように思えます。それよりも、在留の必要性、例えば、日本人の実子の面倒は自分しか見れない、義両親の介護、などを主張するべきでしょう。
○非代替性
例えば、「中国語と日本語に精通したバイリンガルな中国人」でしたら、あなただけでなく他にも何人か見つかりそうですが、「日本人の配偶者」や「外国人の方の連れ子」でしたら、他に替りの方はいません。日本人配偶者の夫(妻)はあなたしかいませんし、あなたの子どもはあなたの子どもだけです。家族は代替することはできません。このような非代替性(あなたでなければならない)という状況は審査上有利なポイントであると考えられます。あなたでなければらない理由を主張立証します。
○公益(国益)
「自国にとって有益な人材を入国させ、国益の発展に貢献してもらいたい」という願いは、どの国の指導者、行政機関にとっても、歴史上、現在ともに変わらず在り続けています。
永住申請の要件ですが、「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」、「我が国の外交、社会、経済、文化等の分野において貢献があると認められる者で、5年以上本邦に在留していること」という要件があります。また、「高度人材ポイント制度」は、高学歴、高収入、高技術で日本国に貢献度が高いと見なされる外国人の日本在留を優遇し、積極的に日本滞在を促す制度です。このように、外国人の日本在留の可否に関して、日本の政策・指針として公益(国益)が念頭に置かれていることは間違いありません。
国益と言うと、とても仰々しい感じがしてしまいますが、要は、日本の文化や経済、社会、そして日本の未来に少しでも貢献できればよいのではないかと思います。具体的には、現在日本が悩んでいる問題にヒントがあると思います。少子高齢化、財政難、単純労働者不足、介護などです。在留資格「介護」、日本人実子を育てる外国人親の「定住者」、技能実習生制度、納税義務の履行。これらは、外国人の日本滞在に公益(国益)を求めている事の現れであると考えられます。上記で該当項目があれば積極的に主張していきます。
○人道上の理由
入管法令や判例、過去の許可事例、その他在留資格に関す書籍など、「人道上の見地から・・・」という言葉がよく出てきます。人道上の見地から当該外国人の日本在留が認められる場合があるからです。「日本人夫(妻)が病気でそばで看病したい」「もしも在留資格を失い、母国に帰るとなると明らかに生活に困窮してしまう」「当該外国人の在留に多くの日本人やその親族が依存している」などのように、在留資格を奪うことが、人道上、社会通念から鑑みて酷であるような場合、それら事情を斟酌して許可不許可を判断していただけます。
ご自身の置かれている状況で上記に合致することは、なかなかないかもしれませんが、常に念頭に置きながら理由書を作成していきます。もちろんですが、上記の状況が存在するからといって許可が下りるわけではありません。ご注意ください。
■変更理由書には何を書くべきか?【離婚後定住】
離婚定住の変更理由書に何を記載するべきか?その情報は様々なところにヒントとして転がっています。そのヒントを以下にご紹介していきます。もちろん、「これをやれば許可を与えます。」ということを、入国管理局も入管法も言っていませんし、言えません。様々な情報やこれまでの経験、事例から推察することになります。まずは、「入国・在留資格審査要領(入国管理局が、許可不許可の判断をする際の指針となるようなガイドライン)」に次のように示されています。
申請人に関して次の要件をいずれも満たすこと。
➀「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」
②「日本人、永住者又は特別永住者のとの間に出生した子を日本国内において養育している等在留を認めるべき特別の事情を有すること」
以上のことからだけでも理由書に何を記載すべきかが少し見えてきます。具体的には、①を満たすために、収入に関する事や預貯金、その他資産について、②を満たすためには、日本人との間の子どもを養育しているという事実(子どもがいなければ在留すべきその他の特別の事情)を記載すればいいのだろうということが伺い知れます。
また、「平成8年7月30日法務省入国管理局長通達」において「日本人の実子を有する外国人親について、子の嫡出・非嫡出問わず、当該外国人親がその子に対する親権を有し、かつ現実にその子を養育監護していれば、子どもには日本人の配偶者等、外国人親には定住者の在留資格を与える」と決定しています。
このことからも、理由書には、子どもの親権を有し、実際に養育監護(子どもと一緒に暮らし育てている)しているとういう事実を記載し立証すればよいことが分かります。
さらに、上記通達に関連する判例(東京地判平成14・4・26)では、「定住者の在留資格変更が許可されるべきは、・・・・平成8年7月30日付法務省入国管理局通達が定める事由に限られると解すべき理由はなく、・・・・これらに定められた事由と同視すべきような特別の事由が認められるときは、在留資格変更を許可すべきである。」と言っています。
この判例から、たとえ上記通達が求める条件を満たしていなくとも、上記と同視しうる特別な事情があれば、それら事実を積極的に理由書に記載し立証すれば、許可の可能性があるということが分かります。(具体的には、離婚協議などの契約で、日常的に子どもの養育監護はしていないものの、頻繁な子どもらとの面会交流や子の外国人親への必要性などが認められる場合等。)
そして、離婚でも死別でも在留資格の変更申請ですので、結婚してから離婚、死別に至るまでの経緯は重要であり、理由書記載は必須です。特に、配偶者の暴力や経済的DVなどは、人道的な見地からか定住者への許可が下りやすくなる傾向にあります。過去の日本での在留状況は考慮されますので、嘘偽りなく簡潔に事実を記載しましょう。
■定住者への変更が認められた事例及び認められなかった事例
法務省入国管理局が「日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等から定住者への在留資格変更許可が認められた事例及び認められなかった事例」を公表しています。許可の見通しや理由書の作成でも大変参考になりますので抜粋して掲載しておきます。
【定住者への在留資格変更許可が認められた事例】
1 | 性別 | 女性 |
本邦在留期間 | 約6年 | |
前配偶者 | 日本人(男性) | |
前配偶者との婚姻期間 | 約6年6ヶ月 | |
死別・離婚の別 | 離婚 | |
前配偶者との間の実子の有無 | 日本人実子(親権は申請人) | |
特記事項 | ・日本人実子の監護・養育実績あり ・訪問介護員として一定の収入有り |
2 | 性別 | 女性 |
本邦在留期間 | 約5年1ヶ月 | |
前配偶者 | 日本人(男性) | |
前配偶者との婚姻期間 | 約3年 | |
死別・離婚の別 | 事実上の破たん | |
前配偶者との間の実子の有無 | 無 | |
特記事項 | ・前配偶者による暴力が原因で婚姻関係が 事実上破たん ・離婚手続きは具体的に執られていない状 況にあったものの、現に別居し双方が 離婚の意思を明確に示していた ・看護助手として一定の収入有り |
3 | 性別 | 男性 |
本邦在留期間 | 約13年8ヶ月 | |
前配偶者 | 特別永住者(女性) | |
前配偶者との婚姻期間 | 約6年1ヶ月 | |
死別・離婚の別 | 死別 | |
前配偶者との間の実子の有無 | 無 | |
特記事項 | ・金属溶接業経営を継続する必要あり ・金属溶接業経営により一定の収入有り |
【定住者への在留資格変更許可が認められなかった事例】
1 | 性別 | 男性 |
本邦在留期間 | 約4年10ヶ月 | |
前配偶者 | 日本人(女性) | |
前配偶者との婚姻期間 | 約3年 | |
死別・離婚の別 | 離婚 | |
前配偶者との間の実子の有無 | 日本人実子(親権は前配偶者) | |
特記事項 | ・詐欺及び傷害のの罪により有罪判決 |
2 | 性別 | 女性 |
本邦在留期間 | 約4年1ヶ月 | |
前配偶者 | 日本人(男性) | |
前配偶者との婚姻期間 | 約3年10か月 | |
死別・離婚の別 | 死別 | |
前配偶者との間の実子の有無 | 無 | |
特記事項 | ・単身で約1年6ヶ月にわたり本邦外で滞在 ・本邦在留中も前配偶者と別居し風俗店で稼働 |
上記、法務省が公表している許可の事例ですが、実際と比べると、若干要件の厳しい事例が掲載されていると感じます。実際は、日本人の実子を養育看護さえしていれば、収入条件が多少悪くとも、婚姻期間がもう少し短くてとも許可は出ているように思えます。
■実際の理由書記載例(離婚後定住)
それでは、上記の理由書作成時のポイントを考慮して書かれた理由書の記載例です。ご参考にしていただければ幸いです。
名古屋入国管理局長 殿 在留資格変更理由書 20××年○月○日 申請人 ○○×× 国 籍 フィリピン共和国 生年月日 1979年○月×日 住 所 愛知県———— 私、○○×× は、「日本人の配偶者等」3年の在留資格で滞在しておりましたが、日本国籍である夫 ○○△△ と 昨年離婚となりました。 私は、夫との間に生まれた実子である ○○□□ を養育監護しております。引き続き日本に滞在し実子を養育監護していきたいと強く希望し、この度の申請に至りました。夫 ○○△△ と婚姻してから現在までの経緯を以下に述べます。貴局におかれましては、よろしくご査証下さいますようお願い申し上げます。 私は、20××年○月○日に日本国籍の ○○△△ フィリピン共和国の方式にて婚姻致しました。その後、日本人の配偶者として20××年○月▷日に来日し、愛知県名古屋市××にて夫と同居を始めました。同居当初、夫婦関係は良好でとても仲が良かったです。しかし、同居してから2年が経過した頃から、夫の収入が減り、家庭にお金を入れてくれないことがあったり、泥酔して帰宅することが多くなっていきました。そのため口論が多くなり、次第にお互いへの愛情もなくなっていき、20××年△月頃に別居を始めました。また、この頃に妊娠が発覚しました。 別居期間中は、妊娠していたとこともあり、仕事はしていませんでした。フィリピン人の友人(氏名:××××、永住者 住所:愛知県 連絡先:090-△△△△-××××)や知人を頼って何とか生活していました。 その後、20××年○月△日に長女 ○○□□ が 生まれました。しかし、別居期間中も、子供が生まれても、夫は私に無関心のようで、ほとんどお互い連絡を取ることはありませんでした。夫婦関係は修復不能でした。したがって、私は長女を一人で養育いていくことを決意し、△月△日に××市役所へ離婚届けを提出し、夫 ○○△△ と離婚しました。 離婚後の生活状況は、生活費の工面をするために、知人の紹介で株式会社○○の物流センター(所在地:愛知県名古屋市—)にて20××年△月より働き始めました。月収は18万円弱になります。勤務時間は17:00から深夜2:00までです。働いている間は、友人の ×××× に子供の面倒を見てもらっていました。 今後の生活設計としましては、しばらくは今まで通り、株式会社○○での月収18万弱と子供の児童手当てとで十分生活していけると考えています。また、この度の身元保証人である ○○△× 氏は、飲食店を営んでおり、日頃から余った食材などを提供していただいており、大変助かっております。今現在も私の働いている間は、友人に子供を預かってもらっていますが、いつまでも迷惑かけるわけにはいきませんので、近い将来は、仕事を平日昼間の勤務にして、子供を保育園に通わせたいと思っています。また、生命保険の加入等、親として子供のために出来ることはしっかりと行っていきます。 この度の申請が離婚から1年半以上も経過し、在留期限直前となってしまい大変申し訳ございませんでした。 私は長女 ○○□□ に日本の教育を受けさせ、日本人として育てていきたいと思っています。前夫の ○○△△ は長女への関心が薄く、今のところ養育の意思は全くありません。私以外に娘を養育できる者はおりません。私の仕事も生活基盤も日本にあります。娘をつれて母国に帰ったとしても、仕事がありません。仕事が見つかる保証もありません。仕事がなければ生活の目途が立ちません。 この度は離婚となってしまいとても悲しいですが、私は、娘の将来の為にも、日本で娘を育て、日本の教育を受けさせたいと思います。以上の理由により在留資格の変更をお願いする次第です。かさねて在留資格変更の手続きが遅くなりましたことを深くお詫びいたします。何卒、ご理解の上許可を賜りますようお願い申し上げます。 |
いかがでしょうか?
それでは、離婚後定住の理由書作成のポイントを以下にまとめます。
➀今後も「実子と同居し、監護養育することを強く希望する」「引き続き日本で
実子を養育監護します。」と宣言してください。入国管理国はこの旨の宣言を
求めています。
②これまでの在留状況や離婚に至った経緯を簡潔に記載します。配偶者の暴力や
悪意の遺棄などは斟酌されやすい理由ですが、大げさに記載して、元配偶者から
反論されたりすると大変です。事実だけを正確に記載してください。離婚理由が
取るに足らないものだとしても審査には特段影響はないと私は考えています。
③今後の生活計画(子供の養育計画)を記載しましょう。収入や生活費用などを
明示して、今後とも子供を十分に養育していけることを立証します。当然です
が、実現可能な計画を立てて下さい。あれもやります、これもやります、と記
載して、更新の際に何も実現されていないと大変なことになります。下手をす
ると嘘を吐いたと取られかねません。
④ビザ変更(在留資格変更)の場合、ほとんどの方が在留資格の変更が必要になっ
たにも関わらず、かなりの期間変更申請をせず放置していることがよくあります
。在留資格を変更する必要があるのに変更せず長期間放置していることは、ビザ
取消の対象です。したがって、ビザ変更申請に期間が空いてしまったら、その事
をしっかりと理由書で謝罪しましょう。
■どんな書類を提出すればよいのか?【離婚後定住】
入国管理局のホームページに掲載されている必要書類は、最低限必要な書類です。これまでの在留状況に特に問題がなく、簡単な単純更新であれば、ホームページ掲載の書類を集めて提出するだけでも良いかと思います。しかし、離婚後定住のように、日本人の配偶者と離婚し、その後も日本での滞在を求めるような、少し通常の在留資格から外れるような申請に関しては、入管ホームページに掲載されている必要最低限の書類を提出するだけでは、正直不安が残ります。実際、日本人配偶者との離婚や死別後の定住者への変更申請に必要な書類は、入管ホームページには明記されていません。したがって、実際に申請する場合には、入国管理局に問い合わせて、必要書類を指示していただく必要があります。
実際に提出する書類・資料は、申請人の方の状況によりケースバイケースです。常に提出が必要な書類に加えて、過去の在留状況や現状を考慮して提出書類を決定します。申請の際に提出する資料で、申請用紙や写真、質問書などの必須書類以外の資料を提出することは、特段禁止されていません。なぜなら、「私は定住者の在留資格に該当しています」ということの立証責任は、申請人側にあるからです。つまり、ビザ(在留資格)に該当していることを証明できると思われる書類・資料を自分で考えて収集・作成し提出することになります。
それでは、自分が定住者の在留資格に該当しているということを立証するためには、どのような書類・資料を提出すればよいのでしょうか?基本的には、理由書を作成する時のポイントと同じで、理由書に記載した内容を証明(疎明)できる書類・資料が望まれます。離婚後死別後定住に関して言えば、必須申請書類の他に追加して提出すると効果的なのは、大きく分けて二つの事を立証できる資料です。一つは「日本人実子の養育監護に関する資料」もう一つは「収入や生計に関する資料」です。以下に具体例をいくつか列挙します。ご参考にしていただけると幸いです。
【必須提出書類】
- 在留資格変更許可申請書
- 戸籍謄本
- 住民票の写し
- 写真(縦4cm×横3cm)
- 所得課税及び納税証明書
- 身元保証書
【日本人の実子の養育監護に関する資料】
- 変更理由書(子供の養育監護に関する事実を記載)
- 母子手帳
- 通園・通学証明書
- 児童扶養手当通知書
- 監護事実の同意書
- 子供を受取人とする生命保険証書
- 子供とのスナップ写真数点
- 親権者代理人として署名押印した契約書 など
【収入や生計に関する資料】
- 変更理由書(職業や収入、資産に関する事実を記載)
- 雇用契約書
- 在職証明書
- 給与明細書
- 源泉徴収票
- 預金残高証明書
- 銀行通帳のコピー
- 固定資産評価証明書
- 家計簿 など
もちろん、すべての書類を提出する必要はなく、その時その時の状況によって、どれか一種類だったり、二種類提出したりと柔軟に対応します。また、離婚後の定住に限らず、収入や職業などの経済的な面での立証が弱いのであれば、頼りがいのある身元保証人が必要となるでしょう。その際の身元保証人にご用意いただく書類は、以下のようなものであることが多いです。
【経済面で少し不安があるときの追加資料】
- 身元保証経緯書(身元保証人になった経緯を記載)
- 身元保証人の在職証明書や源泉徴収票、確定申告書などの収入に関する資料
- 身元保証人の所得課税及び納税証明書
- 身元保証人の履歴書、戸籍謄本、住民票 など